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大本山永平寺御征忌 [献供諷経焼香師]道中記

 翌朝は朝課、供養諷経法要の後、南澤道人不老閣猊下への拝問(ご謁見)を相見の間にて行いました。不老閣拝問のスケジュールはその日の猊下の都合によってどのタイミングとなるのか、それぞれのようです。入室すると、優しく柔和な猊下が正装されて座っておられ、大変気さくに迎え入れて頂きました。現在、御年九十八歳になられるそうですが、顔色・艶良く、元気そうなご様子で、何よりでした。

大本山永平寺不老閣猊下・南澤道人禅師

 引き続いて、小林昌道監院(永平寺の住職)老師への拝問を行いました。監院老師はお隣の群馬県出身であられます。栃木県と群馬県の寺院は昔より交流も盛んであり、いわば、[同郷の志]的親密感を覚えました。 担当する本番の午時献供諷経は11時過ぎからの開始となりました。永平寺は穏やかな晴天に恵まれ、衣、袈裟と重ね着をしている身には少し汗ばむくらいの陽気です。場内には開式の状況を知らせる殿鐘という鐘が澄んだ音色を響かせていました。

 殿鐘が二会目になると次々に大衆が上殿し、広い法堂が沢山の僧侶衆で埋め尽くされていきました。殿鐘三会が打ち上がると、いよいよ導師の上殿となります。先導師老師様に先導され、目線を一畳ほど前に落とし、厳かに静々と進んでいきます。この時、殿鐘と送迎引磬が等間隔で鳴らされ殿鐘七声目で法堂大間への上殿、合掌低頭となります。

七下鐘導師上殿

 高祖様(道元禅師)の像の前の簾が上がりきるまで低頭の状態を保つのですが、このところめっきり耳が遠くなったせいか、本来「カラカラ」と聞こえるはずの簾を上げる音が全く聞こえません・・・。しかたなく、三、四秒程間をとり、拝敷へと上ります。侍者より差し出された大香を注意深く拈じ、香語を唱えます。永平寺では基本、マイクを使用しませんので場内に響くよう、少々張り上げ気味で精一杯重厚な口調で唱えます。

愛語、天ヲ廻ス祖道ノ風
慈恩、浩大ニシテ太圓ニ通ズ
仰欽ス、高祖無量ノ徳
三昧光明、一炷ノ中

拈香法語

おもむろに進前し、香を焚き、戻って全員で高祖様に対して三拝します(普同三拝といいます) 三拝終わって導師は坐具をそのままにし、再び進前し、高祖様に湯・菓・茶を献じる儀式、「献供」を行います。侍者和尚から受け取ったそれぞれの供え物を丁寧に香に薫じ、侍香和尚に渡します。

全ての供え物が供え終わったのを確認し、自位に戻って導師のみ再び三拝します(献供三拝)。この時、お拝に合わせて大磬三声し、同時に読経するお経本が全員に配られます (但し導師には配経はなし) 。後、「妙法蓮華経観世音菩薩普門品」の読経が開始されます。

読経が始まると小磬七声に応じて導師は再度進前焼香し、自位に戻り合掌低頭すると同時に大磬一声、[行道]という、うねり歩きながらの読経が開始します。これを一般の寺院でする場合には「コ」の字型の二本折れで行うのが通常なのですが、永平寺では七本折れ、という、幾重にも折れ曲がって練り歩く形でするので、響く読経の声と相まって、実に清厳な空間が現れ、法要の醍醐味、というものを感じました。理屈抜きに「ありがたい」と感じる体験となりました。

行道

[行道]が二巡すると、元の導師位に戻り、読経を続けます。読経が終盤に差し掛かり、ある個所に至ると大磬に合わせて進前焼香し、自位に戻ってお経の終わりの合図の小磬に合わせて坐具を展じ、導師のみ三拝に入ります。維那和尚さんが唱える「回向」という言葉のそれぞれの決まった箇所に合わせて導師は三拝するのですが、なかなか難しいですね。最後にもう一度進前焼香し、皆と一緒に三拝し、法要は終了、下簾が終わるまで導師は低頭して待つのですが、やはり全く音が聞こえません。しかたないので、だいたいの感じで切り上げさせて頂きました。送迎、先導師様の迎えに応じて静々と退場して、無事お役目が終了となりました。

導師退堂

 さて、法語「愛語、天ヲ廻ス祖道ノ風」についてですが、道元禅師様が御著書、「正法眼蔵」の中で説かれている四つの行動の法「四摂法」の中の一つ「愛語」に依ります。暖かいこころで語りかける慈愛の言葉を「愛語」といい、人を和ませたり、笑顔にし、他者との関係性を良い方向に廻していく力(廻天の力)であると説かれています。

 道元禅師様がこの「四摂法=布施、愛語、利行、同時の四つ」を通して示したかったのは、結局のところ、仏様の御心の本質である「愛」の尊さ、大切さであり、その祖風を受ける私たちは、この「愛」を行動指針とし、精一杯、世の為、人の為に我が命を活用していくことが求められているように感じています。是非皆様もこの「愛語」というものを日々こころがけられてはいかがでしょうか。

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住職・荒木龍胤

芳全寺住職/学校法人芳全寺学園理事長 最近のマイブームは愛犬を愛でること

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